「音程」の版間の差分

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複音程を単音程にするには、まず、7以下になるまでもとの度数から7を引き続ける
複音程を単音程にするには、まず、7以下になるまでもとの度数から7を引き続ける
(より正確に言い換えるなら、もとの度数を7で割った「余り」が単音程された度数になる)。
(より正確に言い換えるなら、もとの度数を7で割った「余り」が単音程化された度数になる)。
また、複音程を単音程にしても、修飾辞は変わらない。
また、複音程を単音程にしても、修飾辞は変わらない。



2024年9月30日 (月) 20:50時点における版

2つの楽音の相対的関係をいう。

音程はふつう「長3度」「完全5度」のように、 「度」という単位に「長」や「完全」のような修飾辞をつけて表記する。 英語では、major 3rd、perfect 5thのように修飾辞と序数であらわす。

このほか、いくつかの基本的な音程には固有の名前が付いている。

固有の名前の付いた音程

固有の名前のついた基本的な音程には主に次の5種類が知られている。

ユニゾン(同度)
同じ楽音どうしの音程。例えば、2人の管楽器奏者が同じピッチの音を同時に演奏しているとき、この2つの楽音の音程は同度(ユニゾン)の関係にある。
半音
隣り合う楽音同士の音程。
全音
半音2つ分の音程。
トライトーン(三全音)
全音3つ分の音程。半音6つ分ということもできる。
オクターブ
同じ音名(正確にはピッチ・クラス名)を持つ音のうち、最も近い音との関係。ピアノの鍵盤では、約16.5cm右側(あるいは左側)にある同じ色の鍵盤との関係。オクターブの関係にある2つの音の振動数の比は、1:2。半音12個分、全音6個分。なお、トライトーンはオクターブのちょうど半分にあたる。

修飾辞+数字+「度」であらわす音程

英語では修飾辞+序数であらわす。


「数字」の意味

音名は、アルファベットを用いてあらわし、必要に応じて♯や♭などを付けるが、 音程で使われる度数は、音名のアルファベット部分の関係をあらわす。 すなわち度数の数字は、音名をで使われるアルファベットが どれだけ隔たっているかを示している。

言い換えるならば、五線譜上における「線」と「間」の数の合計ということもできる。 このときそれぞれの楽音が存在している「線」または「間」も数えることに注意。

以下にいくつかの音程の例を示した。 順に1度、2度、3度、4度の音程である。

最初の音程は、CとC、つまり同じピッチを持つ2つの音からなる音程の例である。 すなわちユニゾン(同度)なのだが、これを度数であらわすと1度ということになる(0度ではない)。

次の音程は、CとDからなっている。 音名のアルファベットに注目しよう。 Cを1番目と数えると、Dは2番目にあたる。 したがって、この音程は2度である。

その次の音程は、CとEであり、Cから数えてEは3番目のアルファベットにあたる。 したがって、この音程は3度である。

最後は、FとBの例である。 FからみてBは何番目のアルファベットにあたるのだろうか。 5番目と思った方、それはF-E-D-C-Bのように逆にたどっている可能性がある。 正しくは、4番目である。音名で使われるアルファベットは、 …-A-B-C-D-E-F-G-A-B-C-D-E-F-G-A-B-C-D-E-F-G-… のように考える必要があり、ここではF-G-A-Bの部分を見なくてはならない。 すると、Fから見てBは4番目にあたり、この音程は4度ということになる。

このように、音程は一般に低い音を基準に高い音との関係を調べることが多い。

音程の度数と「線」と「間」の数にも注目してみよう。

最初の音程の例では、1つの線(加線)を2つの音が共有している。したがって、 これは1度ということになる。

次の例では、Cの音が「線」(下第1線)の上にあり、 また、Dの音が「間」(下第1間)にある。 また、これらの音の間には「線」や「間」がない。 よって、これらの音の範囲には、2つの「線」と「間」があるといえる (それぞれの音が存在しているものも含む)。 よって、この音程は2度である。

次の例は、Cの音が「線」の上に、また、Eの音も「線」(第1線)の上にある。 そして、これらの音の間には一つの「間」(第1間)がある。 よって、これら2つの音の間には、それぞれの音が存在する「線」も含めて、 2つの「線」と1つの「間」を数えることができる。 したがって、これは3度である。

最後の例も同様に、FとBの音の間には、 それぞれの音が存在する「線」や「間」も数えると、 この音程には4つの「線」と「間」が存在している。 よって、この音程は4度である。


音程の「足し算」

ある音から3度上の音の、さらに3度上の音は、もとの音から何度上だろうか。 3 + 3 = 6 なので6度では?と考えてしまいがちだが、正解は5度である。

次の譜例を見ると、 EはCの3度上であること、GはEの3度上であること、 そして、GがCの5度上であることがわかるだろう。 GはCから数えて5番目である。

音程の「度数」は、基準となる音そのものを1番目と数える。 したがって、音程の「足し算」をするとき、音程の数字は 「足し算」をするごとに合計から1を引くことで求められる。

同様に1オクターブは、8度であるが、2オクターブは、8度+8度であるため、 8 + 8 -1、すなわち15度ということになる。


修飾辞の役割と種類

修飾辞+数字+「度」(英語の場合、修飾辞+序数)であらわす音程について、 数字(度数、序数)が何をあらわすかは@ref{「数字」の意味}で説明した通りである。

すなわち、Dとその上にあるAとの音程は5度である。 音程は、音名のアルファベットの部分の関係をあらわしているので、 DとA♭、あるいは、DとA♯との関係も5度ということになる。

このような理由から、上に示した音程はすべて5度である。 ところが、実際に鍵盤で演奏しみると明らかであるが、これらの5度の音程は すべて異なる。

このように、音程をあらわす度数は音名のアルファベット部分の関係 (あるいは五線譜上の音符の位置関係)をあらわしているに過ぎないため、 大雑把なものといえる。 音程をより正確に表現するためには修飾辞で区別する必要があることがわかるだろう。

修飾辞には、完全(perfect)、長(major)、短(minor)、 増(augmented)、減(diminished)、 重増(double-augmented)、重減(double-diminished)の7種類がある (括弧内は英語の修飾辞)。 ただし、重増と重減は、滅多に使われることはない。 4 もっともよく使われる修飾辞は、長(major){短(minor)完全(perfect)の3つである。

度数によって、「長」・「短」を伴うが「完全」は伴わないもの、 「完全」は伴うが「長」・「短」を伴わないものが決まっている。 そして、「長」は「短」より半音広い音程 (逆の見方をすると「短」は「長」より半音狭い音程)をあらわす。 例えば、長3度は短3度と比べて半音広い音程である。

次によく使われる修飾辞は、増(augmented)減(diminished)である。 「増」とは「長」または「完全」よりもさらに半音広く、 また、「減」とは「短」または「完全」よりもさらに半音狭い音程である。 例えば、増2度は長2度よりもさらに半音広く、また減4度は完全4度よりも半音狭い音程だ。

「増」よりもさらに半音広い音程を重増(double-augmented)、 「減」よりさらに半音狭い音程を重減(double-diminished)という。 この2つは、実際の場ではほとんど使われることがないといってもよいだろう。

改めて、上の譜例を見ていtだきたい。

最初の音程(DとA)を完全5度という。 後述するが、 5度には「完全」が付くことがあっても、「長」や「短」が付くことはない。

2つ目の音程であるDとA♭は、最初の音程(完全5度)よりも半音狭いことがわかる。 したがって、これは減5度である。

3つ目の音程であるDとA♯は、最初の音程(完全5度)よりも半音広い音程である。 よって、これは増5度という音程だ。

さらに、4つ目の音程は2つ目の音程(減5度)よりもさらに半音狭い音程なので重減5度、 また5つ目の音程は、3つ目の音程(増5度)よりもさらに半音広い音程であることから 重増5度ということになる。

修飾辞の一覧とそれらの関係を次にまとめた。

修飾辞(日本語) 修飾辞(英語) 意味(関係)
重減 double-diminished 「減(diminished)」より半音狭い。
diminished 「短(minor)」または「完全(perfect)」より半音狭い。
minor 「長」より半音狭い。
完全 perfect 「減」より半音広く、「増」より半音狭い。完全協和音程をあらわす。
major 「短」より半音広い。
augmented 「長(major)」または「完全(perfect)」より半音広い。
重増 double-augmented 「増(augmented)」より半音広い。


単音程とメジャー・スケール

1オクターブ以内の音程のことを単音程という。

一方、1オクターブを超える音程が複音程という。

複音程についてはあらためて説明する。 複音程は単音程の応用ですぐに理解できるので、 まずは単音程をきちんと学ぶことが大切だ。

1オクターブを完全8度という。 よって、実際の現場において、単音程をおおむね1度から8度までの音程と 考えて差し支えない。 厳密な定義とは異なるが、1--8度が単音程、9度以上が複音程と 理解するほうが、実践ではむしろ役に立つだろう。

さて、すでに説明したように、度数によって、 修飾辞の「長」・「短」を伴うが「完全」を伴なわないものと、 「完全」を伴うが「長」・「短」を伴わないものが決まっている。 これらについて、1度から8度までについて整理すると次のようになる。

「長」「短」を伴うグループ
2度、3度、6度、7度
「完全」を伴うグループ
1度、4度、5度、8度

つまり完全3度や長4度という音程は存在しない。

まずは、このグループ分けを覚えてしまおう。

さて、音名や五線譜上から、3度や4度という数字は数えれば分かるが、 どの修飾辞をつけたらよいのか、慣れるまではとても難しいだろう。

修飾辞の調べ方のひとつに、メジャー・スケールを文字通り 「ものさし(スケール)」として使う方法がある。

音程を覚える1つ目の方法はは、上の譜例が示すように メジャー・スケール上のそれぞれの音と主音(階名「ド」)がつくる 音程の修飾辞が、すべて「長」または「完全」になっているということを 利用した覚え方だ。

例えば、上の譜例の左側に示したコードのコード・トーンが、 ルートであるCに対してそれぞれ何度上の音にあたるかを考えてみよう。

Cの音からの音程を考えるので、Cメジャー・スケールを「ものさし」として使う。

まず、音名のアルファベットの関係(あるいは五線上の「線」と「間」の数)から、 コードのE、G♯、B♭の音が、Cの音のそれぞれ3度上、5度上、7度上と いうことはわかるだろう。 問題は、どの修飾辞をつけたらよいかである。

まず、3度上のEの音との音程から考えよう。

Eは、Cメジャー・スケール上にある音だ。 メジャー・スケール上の音と主音との音程の修飾辞は 必ず「長」または「完全」のどちらかである。 また、3度は「長」または「短」を伴うグループであるから、 EはCの長3度上ということがわかる。

次に、5度上のG♯についてみてみよう。 Cメジャー・スケール上にG♯の音は存在しないが、 同じアルファベットを使うGの音に注目する。 メジャー・スケール上の音と主音との音程の修飾辞は、すべて「長」か「完全」であり、 5度は「長」や「短」ではなく「完全」を伴うグループであるから、 CとGの音程であればは完全5度ということになる。 さらに、ここで求めるCとG♯の音程はCとGの音程である完全5度よりも半音広い ので、この音程は、「完全」より半音広い修飾辞「増」を伴う増5度と表現すると 導くことができる。。

最後に、Cとその7度上のB♭の音程を調べよう。 Cメジャー・スケール上の7度の音はBである。 7度は修飾辞に「長」や「短」を使うグループなので、CとBの音程は長7度。 ここで求めたいCとB♭との音程はそれより半音狭いので、 これは短7度ということになる。

それでは、コード・トーンのEの音と、 ほかのコード・トーンG♯、B♭との音程を調べてみよう。

Eの音との音程を調べるので、 Eメジャー・スケールを「ものさし」して使う。 EとG♯は3度で、G♯はEメジャー・スケール上にある音なので、これは長3度である。 また、EとB♭は5度で、Eメジャー・スケール上にBの音なら存在して、 これが完全5度。 したがって、それより半音分狭いEとB♭との音程は減5度であると分かる。

このように、調べたい音程の低い方の音から始まるメジャー・スケールを 「ものさし」として使うことで、メジャー・スケール上にある音を基準に、 実際に調べたい音との音程の違い(差分)から、修飾辞を導くことができる。

本来メジャー・スケールとはメジャー・キーに対応したスケールであるが、 ここではキーとは完全に切り離して、 メジャー・スケールを道具(ものさし)と割り切って 使っていることに注意されたい。

単音程の転回

単音程をつくる2つの楽音のうち、低いほうの音を1オクターブ上げる操作の ことを、単音程の転回という。

単音程の転回の前後の音程には次のような関係がある。

  • もとの音程が n 度のとき、新しくできる音程は 9-n
  • もとの音程と新しくできる音程の修飾辞は次の関係になる。
    • もとの音程の修飾辞が「完全」のとき、新しい音程の修飾辞も「完全」
    • もとの音程の修飾辞が「長」のとき、新しい音程の修飾辞は「短」
    • もとの音程の修飾辞が「短」のとき、新しい音程の修飾辞は「長」
    • もとの音程の修飾辞が「増」のとき、新しい音程の修飾辞は「減」
    • もとの音程の修飾辞が「減」のとき、新しい音程の修飾辞は「増」
    • もとの音程の修飾辞が「重増」のとき、新しい音程の修飾辞は「重減」
    • もとの音程の修飾辞が「重減」のとき、新しい音程の修飾辞は「重増」

以上の関係から、例えば長3度、完全4度、増5度を転回してできる音程は、それぞれ 短6度、完全5度、減4度である(次の譜例を参照)。

複音程と、その単音程化

1オクターブを超える音程を複音程というが、 実践的には9度以上の音程だと考えて差し支えないだろう。

複音程は単音程と比べて、楽音どうしの距離も離れている上に数字も大きいので 直感的にわかりにくい。 したがって、複音程は、「何オクターブと何度(単音程)」 のように把握するとわかりやすくなるだろう。 例えば、増11度は「1オクターブと増4度」と考えるのである。

複音程を単音程にするには、まず、7以下になるまでもとの度数から7を引き続ける (より正確に言い換えるなら、もとの度数を7で割った「余り」が単音程化された度数になる)。 また、複音程を単音程にしても、修飾辞は変わらない。

複音程でもっともよく使われるのは、主にテンションで使われる9度、11度、13度であろう。 これらはそれぞれ、1オクターブと2度、1オクターブと4度、1オクターブと6度である。 ちなみに、1オクターブは完全8度であるが、2オクターブは完全15度である。