「II7」の版間の差分

提供:コード辞典
 
(同じ利用者による、間の8版が非表示)
4行目: 4行目:
また、'''II7''' は[[ドミナント機能]]を持つので、'''[[VIm7]]''' や [[VIm7(♭5)|'''VIm7<sup>(♭5)</sup>''']] が[[関係コード]]として先行する。
また、'''II7''' は[[ドミナント機能]]を持つので、'''[[VIm7]]''' や [[VIm7(♭5)|'''VIm7<sup>(♭5)</sup>''']] が[[関係コード]]として先行する。


'''II7''' に対応する[[スケール]]は、[[メジャー・キー]]では主に[[ミクソリディアン]]、[[ミクソリディアン♯4]]、[[ホール・トーン・スケール]]、マイナー・キーでは主に[[オルタード・スケール]]や[[フリジアン♭3]]である。
'''II7''' に対応する[[スケール]]は、[[メジャー・キー]]では主に[[ミクソリディアン]]、[[ミクソリディアン♯4]]、[[ホール・トーン・スケール]]、マイナー・キーでは主に[[オルタード・スケール]]や[[フリジアン♯3]]である。
ホール・トーン・スケールに対応するとき、原則として[[コード・シンボル]]は [[II7(♯5)|'''IIm7<sup>(♯5)</sup>''']] と記される。
ホール・トーン・スケールに対応するとき、原則として[[コード・シンボル]]は [[II7(♯5)|'''II7<sup>(♯5)</sup>''']] と記される。


[[File:II7.png|500px]]
[[File:II7.png|500px]]


== '''II7''' の進行先 ==
== メジャー・キーにおけるダブル・ドミナント '''II7''' ==


[[メジャー・キー]]では、主に次のコードに進行する。
[[メジャー・キー]]における '''II7''' に対応する[[スケール]]は、主に[[ミクソリディアン]]、[[ミクソリディアン♯4]]、[[ホール・トーン・スケール]]である。
また、[[ブルージー]]な[[メロディ]]のときには、一般に[[オルタード・スケール]]が対応する。
ただし、[[テーマ]]のメロディがミクソリディアンに対応する場合であっても、[[ソロ]]ではミクソリディアン♯4になるケースもある。


* [[ドミナント]] '''[[V7]]'''([[IIm7-V7|'''IIm7'''-'''V7''' や '''IIm7(♭5)-V7|'''IIm7<sup>(♭5)</sup>'''-'''V7''' を含む)
* ミクソリディアンの例
* ドミナントの[[トライトーン代理]] '''[[♭II7]]'''([[♭IVm7-♭II7|'''♭IVm7'''-'''♭II7''']])
** ''There Will Never Be Another You''(Harry Warren)の13-14小節目
* [[トニック・メジャー]][[ベース音]][[ドミナント]]のもの)'''[[I/V]]'''
* ミクソリディアン♯4の例
* [[サブドミナント・マイナー]] '''[[IVmmaj7]]'''、'''[[IVm6]]'''
** ''Desafinado''(Antônio Carlos Jobim)の3-4小節目(ホール・トーン・スケールも可能)
* ホール・トーン・スケールの例
** ''Take The `A' Train''(Billy Strayhorn)の3-4小節目
* オルタード・スケールの例
** ''Gee Baby, Ain't I Good To You''(Don Redman)の3小節目前半
 
メジャー・キーでは、ダブル・ドミナント '''II7''' [[関係コード]]として '''[[VIm7]]''' が先行することが多い。
これは、[[トニック・メジャー]][[代理コード|代理]]との[[ピボット]]となっていることが多い。
ただし、'''II7''' がホール・トーン・スケールに対応するとき、関係コードは原則として先行しない。
 
メジャー・キーの '''II7''' は、主に次のコードに進行する。


[[マイナー・キー]]では、主に次のコードに進行する。
* [[ドミナント]] '''[[V7]]'''([[IIm7-V7|'''IIm7'''-'''V7''' や '''IIm7(♭5)-V7|'''IIm7<sup>(♭5)</sup>'''-'''V7''' を含む)
* [[ドミナント]] '''[[V7]]'''([[IIm7-V7|'''IIm7'''-'''V7''' や '''IIm7(♭5)-V7|'''IIm7<sup>(♭5)</sup>'''-'''V7''' を含む)
* ドミナントの[[トライトーン代理]] '''[[♭II7]]'''([[♭IVm7-♭II7|'''♭IVm7'''-'''♭II7''']])
* ドミナントの[[トライトーン代理]] '''[[♭II7]]'''([[♭IVm7-♭II7|'''♭IVm7'''-'''♭II7''']])
* [[トニック・マイナー]]([[ベース音]]が[[ドミナント]]のもの)'''[[Im/V]]'''
* トニック・メジャー([[ベース音]]が[[ドミナント]]のもの)'''[[I/V]]'''
* [[サブドミナント・マイナー]]とその[[代理コード]] '''[[IVmmaj7]]'''、'''[[IVm6]]'''、'''[[♭VII7]]''
* [[トニック・ディミニッシュ]] '''[[♯IIdim7]]'''


また、メジャー・キーの '''II7''' は、[[トニック・メジャー]] '''Imaj7''' とその代理コード '''VIm7'''、'''II7''' へのドミナント '''[[VI7]]''' とその代理コード '''[[♭III7]]'''(それぞれ関係コードが先行する場合を含む)などから進行する。
'''[[VI7]]''' と '''♭III7''' は、ほとんどの場合[[エクステンデッド・ドミナント]]の一環であろう。


== '''II7''' に対応するスケール ==
また、'''II7''' に進行するトニック・メジャー代理 '''VIm7''' は、'''II7''' の関係コードに相当するが、このコードが '''II7''' に対して相対的に「弱拍」に置かれるとき、いわゆる「[[呼び込みの関係コード]]」として機能する。


[[メジャー・キー]]では、原則として[[ミクソリディアン]]であり、[[ミクソリディアン♯4]]や[[ホール・トーン・スケール]]の場合もある。
== マイナー・キーにおけるダブル・ドミナント '''II7''' ==
ただし、ミクソリディアンとミクソリディアン♯4はそこまで厳密に区別されないことがある。
いずれも、長9度のテンションを持つという共通点がある。
ただし、[[メロディ]]や[[ソロ]]が[[ブルージー]]な場合に限り、[[オルタード・スケール]]となる。


* ミクソリディアン
[[マイナー・キー]]において、[[ダブル・ドミナント]] '''II7''' に対応する[[スケール]]は、オルタード・スケールまたはフリジアン♯3のいずれかであることが多いが、これらは実際にはそこまで厳密に区別されないことも多い。
** ''There Will Never Be Another You''(Harry Warren)の13-14小節目
* ミクソリディアン♯4
** ''Desafinado''(Antônio Carlos Jobim)の3-4小節目(ホール・トーン・スケールも可能)
* ホール・トーン・スケール
** ''Take The `A' Train''(D. Ellington, B. Strayhorn)の3-4小節目
* オルタード・スケール
** ''Gee Baby, Ain't I Good To You''(Don Redman)の3小節目前半
 
また、マイナー・キーの場合、オルタード・スケールまたはフリジアン♯3のいずれかであることが多いが、実際にはそこまで厳密に区別されないことも多い。
いずれも、短9度と短13度のテンションを持つという共通点がある。
いずれも、短9度と短13度のテンションを持つという共通点がある。


* オルタード・スケール
マイナー・キーでは、ダブル・ドミナント '''II7''' の[[関係コード]]として [[VIm7(♭5)|'''VIm7<sup>(♭5)</sup>''']] が先行することが多い。
** (調査中)
これは、[[トニック・マイナー]][[代理コード|代理]]との[[ピボット]]となっていることが多い。
* フリジアン♯3
** (調査中)


== II7に先行する関係コード ==
マイナー・キーの '''II7''' は、主に次のコードに進行する。
[[ダブル・ドミナント] '''II7''' は、ドミナント機能を持つので、ルートの5度上をルートとする[[マイナー・セブンス・コード]]または[[ハーフ・ディミニッシュ・コード]]が関係コードとして先行する。
ただし、[[II7(♯5)|'''IIm7<sup>(♯5)</sup>''']] には関係コードが先行しないことが多い。


メジャー・キーでは '''[[IVm7]]''' が先行することが多い。
* [[ドミナント]] '''[[V7]]'''([[IIm7-V7|'''IIm7'''-'''V7''' や '''IIm7(♭5)-V7|'''IIm7<sup>(♭5)</sup>'''-'''V7''' を含む)
これは、[[トニック・メジャー]][[代理コード|代理]]を兼ねていたり、[[平行調]][[トニック・マイナー]]との[[ピボット]]になっていたりするケースも少なくない。
* ドミナントの[[トライトーン代理]] '''[[♭II7]]'''([[♭IVm7-♭II7|'''♭IVm7'''-'''♭II7''']]
* [[トニック・マイナー]]([[ベース音]]が[[ドミナント]]のもの)'''[[Im/V]]'''


マイナー・キーでは多くの場合 [[IVm7(♭5)|IVm7<sup>♭5)</sup>''']] が先行する。
また、マイナー・キーの '''II7''' へは、トニック・マイナー '''[[Im]]''' とその代理コード'''VIm7<sup>(♭5)</sup>'''、'''II7''' へのドミナント '''[[VI7]]''' などから進行する。


== '''II7''' の代理コードや関係の深いコード進行 ==
== '''II7''' の代理コードや関係の深いコード進行 ==


[[ダブル・ドミナント]]の[[代理コード]]として、[[トライトーン代理]]の '''[[♭VI7]]''' がある。
[[ダブル・ドミナント]] '''II7''' の[[代理コード]]として、[[トライトーン代理]]の '''[[♭VI7]]''' がある。
これは、[[マイナー・キー]]で特に好まれる傾向にある。
これは、[[マイナー・キー]]で特に好まれる傾向にある。


また、[[メジャー・キー]]におけるダブル・ドミナント '''II7''' は、トニック・ディミニッシュ(特に '''[[♭IIIdim7]]''') と関係がある。
また、[[メジャー・キー]]におけるダブル・ドミナント '''II7''' は、[[トニック・ディミニッシュ]](特に '''[[♭IIIdim7]]''') と関係がある。


例えば、こんにち ''’S Wonderful''(George Gershwin)の27-28小節目は '''♭IIIdim7''' で演奏することが多いが、もともとは '''II7'''であった。
例えば、こんにち ''’S Wonderful''(George Gershwin)の27-28小節目は '''♭IIIdim7''' で演奏することが多いが、もともとは '''II7'''であった。
68行目: 68行目:
ただし、対応する[[スケール]]に注目すると、 '''II7''' が[[ミクソリディアン]]であるのに対して、'''♭IIIdim7''' は[[ディミニッシュ・スケール]]であるため、スケールは共通していない。
ただし、対応する[[スケール]]に注目すると、 '''II7''' が[[ミクソリディアン]]であるのに対して、'''♭IIIdim7''' は[[ディミニッシュ・スケール]]であるため、スケールは共通していない。
よって、'''♭IIIdim7''' は '''II7''' の代理コードとみなすよりも、[[リハーモナイゼーション|リハーモナイズ]]したものと考えるほうが妥当かもしれない。
よって、'''♭IIIdim7''' は '''II7''' の代理コードとみなすよりも、[[リハーモナイゼーション|リハーモナイズ]]したものと考えるほうが妥当かもしれない。
== '''IV''' へのドミナント '''I7''' に先行する関係コード '''Vm7''' に進行する '''II7''' ==
[[メジャー・キー]]において、'''II7''' は '''[[Vm7]]''' に進行することがある。
この '''Vm7''' は多くの場合、[[サブドミナント・メジャー]]への[[セカンダリ・ドミナント]] '''I7''' に対して関係コードとして先行している場合が多い。
このとき、'''II7''' についてはダブル・ドミナントではなく、単なる広義の[[ドミナント機能|ドミナント]](広義の[[セカンダリ・ドミナント]])と考えることもできる
(個人的にはダブル・ドミナントと厳密に区別することにさほど大きな意義を見出すことができないが、このように注意深く観察する視点はとても重要だと考える)。
このとき、多くの場合、'''II7''' に対して関係コード '''[[VIm7]]''' が先行する。
また、'''II7''' に対応するスケールは、原則として[[ミクソリディアン]]であろう。


[[Category:コード進行辞典]]
[[Category:コード進行辞典]]
[[Category:II]]
[[Category:逆引きコード進行辞典]]
[[Category:II7]]
[[Category:ドミナント・セブンス・コード]]
[[Category:ドミナント・セブンス・コード]]
{{DEFAULTSORT:20_7}}
{{DEFAULTSORT:2n_7}}

2024年10月19日 (土) 10:56時点における最新版

II7ダブル・ドミナントである。

ダブル・ドミナントは、ドミナントへのドミナントとされるので、一般にドミナントに関係するコードに進行しやすい。 また、II7ドミナント機能を持つので、VIm7VIm7(♭5)関係コードとして先行する。

II7 に対応するスケールは、メジャー・キーでは主にミクソリディアンミクソリディアン♯4ホール・トーン・スケール、マイナー・キーでは主にオルタード・スケールフリジアン♯3である。 ホール・トーン・スケールに対応するとき、原則としてコード・シンボルII7(♯5) と記される。

メジャー・キーにおけるダブル・ドミナント II7

メジャー・キーにおける II7 に対応するスケールは、主にミクソリディアンミクソリディアン♯4ホール・トーン・スケールである。 また、ブルージーメロディのときには、一般にオルタード・スケールが対応する。 ただし、テーマのメロディがミクソリディアンに対応する場合であっても、ソロではミクソリディアン♯4になるケースもある。

  • ミクソリディアンの例
    • There Will Never Be Another You(Harry Warren)の13-14小節目
  • ミクソリディアン♯4の例
    • Desafinado(Antônio Carlos Jobim)の3-4小節目(ホール・トーン・スケールも可能)
  • ホール・トーン・スケールの例
    • Take The `A' Train(Billy Strayhorn)の3-4小節目
  • オルタード・スケールの例
    • Gee Baby, Ain't I Good To You(Don Redman)の3小節目前半

メジャー・キーでは、ダブル・ドミナント II7関係コードとして VIm7 が先行することが多い。 これは、トニック・メジャー代理とのピボットとなっていることが多い。 ただし、II7 がホール・トーン・スケールに対応するとき、関係コードは原則として先行しない。

メジャー・キーの II7 は、主に次のコードに進行する。

また、メジャー・キーの II7 は、トニック・メジャー Imaj7 とその代理コード VIm7II7 へのドミナント VI7 とその代理コード ♭III7(それぞれ関係コードが先行する場合を含む)などから進行する。 VI7♭III7 は、ほとんどの場合エクステンデッド・ドミナントの一環であろう。

また、II7 に進行するトニック・メジャー代理 VIm7 は、II7 の関係コードに相当するが、このコードが II7 に対して相対的に「弱拍」に置かれるとき、いわゆる「呼び込みの関係コード」として機能する。

マイナー・キーにおけるダブル・ドミナント II7

マイナー・キーにおいて、ダブル・ドミナント II7 に対応するスケールは、オルタード・スケールまたはフリジアン♯3のいずれかであることが多いが、これらは実際にはそこまで厳密に区別されないことも多い。 いずれも、短9度と短13度のテンションを持つという共通点がある。

マイナー・キーでは、ダブル・ドミナント II7関係コードとして VIm7(♭5) が先行することが多い。 これは、トニック・マイナー代理とのピボットとなっていることが多い。

マイナー・キーの II7 は、主に次のコードに進行する。

また、マイナー・キーの II7 へは、トニック・マイナー Im とその代理コードVIm7(♭5)II7 へのドミナント VI7 などから進行する。

II7 の代理コードや関係の深いコード進行

ダブル・ドミナント II7代理コードとして、トライトーン代理♭VI7 がある。 これは、マイナー・キーで特に好まれる傾向にある。

また、メジャー・キーにおけるダブル・ドミナント II7 は、トニック・ディミニッシュ(特に ♭IIIdim7) と関係がある。

例えば、こんにち ’S Wonderful(George Gershwin)の27-28小節目は ♭IIIdim7 で演奏することが多いが、もともとは II7であった。

ただし、対応するスケールに注目すると、 II7ミクソリディアンであるのに対して、♭IIIdim7ディミニッシュ・スケールであるため、スケールは共通していない。 よって、♭IIIdim7II7 の代理コードとみなすよりも、リハーモナイズしたものと考えるほうが妥当かもしれない。

IV へのドミナント I7 に先行する関係コード Vm7 に進行する II7

メジャー・キーにおいて、II7Vm7 に進行することがある。 この Vm7 は多くの場合、サブドミナント・メジャーへのセカンダリ・ドミナント I7 に対して関係コードとして先行している場合が多い。

このとき、II7 についてはダブル・ドミナントではなく、単なる広義のドミナント(広義のセカンダリ・ドミナント)と考えることもできる (個人的にはダブル・ドミナントと厳密に区別することにさほど大きな意義を見出すことができないが、このように注意深く観察する視点はとても重要だと考える)。

このとき、多くの場合、II7 に対して関係コード VIm7 が先行する。 また、II7 に対応するスケールは、原則としてミクソリディアンであろう。