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== '''II7''' | == メジャー・キーにおけるダブル・ドミナント '''II7''' == | ||
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* | * ミクソリディアンの例 | ||
** ''There Will Never Be Another You''(Harry Warren)の13-14小節目 | |||
* ミクソリディアン♯4の例 | |||
** ''Desafinado''(Antônio Carlos Jobim)の3-4小節目(ホール・トーン・スケールも可能) | |||
* ホール・トーン・スケールの例 | |||
** ''Take The `A' Train''(Billy Strayhorn)の3-4小節目 | |||
* オルタード・スケールの例 | |||
** ''Gee Baby, Ain't I Good To You''(Don Redman)の3小節目前半 | |||
メジャー・キーでは、ダブル・ドミナント '''II7''' の[[関係コード]]として '''[[VIm7]]''' が先行することが多い。 | |||
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== マイナー・キーにおけるダブル・ドミナント '''II7''' == | |||
[[マイナー・キー]]において、[[ダブル・ドミナント]] '''II7''' に対応する[[スケール]]は、オルタード・スケールまたはフリジアン♯3のいずれかであることが多いが、これらは実際にはそこまで厳密に区別されないことも多い。 | |||
いずれも、短9度と短13度のテンションを持つという共通点がある。 | いずれも、短9度と短13度のテンションを持つという共通点がある。 | ||
マイナー・キーでは、ダブル・ドミナント '''II7''' の[[関係コード]]として [[VIm7(♭5)|'''VIm7<sup>(♭5)</sup>''']] が先行することが多い。 | |||
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また、マイナー・キーの '''II7''' へは、トニック・マイナー '''[[Im]]''' とその代理コード'''VIm7<sup>(♭5)</sup>'''、'''II7''' へのドミナント '''[[VI7]]''' などから進行する。 | |||
== '''II7''' の代理コードや関係の深いコード進行 == | == '''II7''' の代理コードや関係の深いコード進行 == | ||
[[ダブル・ドミナント]]の[[代理コード]]として、[[トライトーン代理]]の '''[[♭VI7]]''' がある。 | [[ダブル・ドミナント]] '''II7''' の[[代理コード]]として、[[トライトーン代理]]の '''[[♭VI7]]''' がある。 | ||
これは、[[マイナー・キー]]で特に好まれる傾向にある。 | これは、[[マイナー・キー]]で特に好まれる傾向にある。 | ||
また、[[メジャー・キー]]におけるダブル・ドミナント '''II7''' | また、[[メジャー・キー]]におけるダブル・ドミナント '''II7''' は、[[トニック・ディミニッシュ]](特に '''[[♭IIIdim7]]''') と関係がある。 | ||
例えば、こんにち ''’S Wonderful''(George Gershwin)の27-28小節目は '''♭IIIdim7''' で演奏することが多いが、もともとは '''II7'''であった。 | 例えば、こんにち ''’S Wonderful''(George Gershwin)の27-28小節目は '''♭IIIdim7''' で演奏することが多いが、もともとは '''II7'''であった。 | ||
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よって、'''♭IIIdim7''' は '''II7''' の代理コードとみなすよりも、[[リハーモナイゼーション|リハーモナイズ]]したものと考えるほうが妥当かもしれない。 | よって、'''♭IIIdim7''' は '''II7''' の代理コードとみなすよりも、[[リハーモナイゼーション|リハーモナイズ]]したものと考えるほうが妥当かもしれない。 | ||
== '''IV''' へのドミナント '''I7''' に先行する関係コード '''Vm7''' に進行する '''II7''' == | |||
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この '''Vm7''' は多くの場合、[[サブドミナント・メジャー]]への[[セカンダリ・ドミナント]] '''I7''' に対して関係コードとして先行している場合が多い。 | |||
このとき、'''II7''' についてはダブル・ドミナントではなく、単なる広義の[[ドミナント機能|ドミナント]](広義の[[セカンダリ・ドミナント]])と考えることもできる | |||
(個人的にはダブル・ドミナントと厳密に区別することにさほど大きな意義を見出すことができないが、このように注意深く観察する視点はとても重要だと考える)。 | |||
このとき、多くの場合、'''II7''' に対して関係コード '''[[VIm7]]''' が先行する。 | |||
また、'''II7''' に対応するスケールは、原則として[[ミクソリディアン]]であろう。 | |||
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2024年10月19日 (土) 10:56時点における最新版
II7 は ダブル・ドミナントである。
ダブル・ドミナントは、ドミナントへのドミナントとされるので、一般にドミナントに関係するコードに進行しやすい。 また、II7 はドミナント機能を持つので、VIm7 や VIm7(♭5) が関係コードとして先行する。
II7 に対応するスケールは、メジャー・キーでは主にミクソリディアン、ミクソリディアン♯4、ホール・トーン・スケール、マイナー・キーでは主にオルタード・スケールやフリジアン♯3である。 ホール・トーン・スケールに対応するとき、原則としてコード・シンボルは II7(♯5) と記される。
メジャー・キーにおけるダブル・ドミナント II7
メジャー・キーにおける II7 に対応するスケールは、主にミクソリディアン、ミクソリディアン♯4、ホール・トーン・スケールである。 また、ブルージーなメロディのときには、一般にオルタード・スケールが対応する。 ただし、テーマのメロディがミクソリディアンに対応する場合であっても、ソロではミクソリディアン♯4になるケースもある。
- ミクソリディアンの例
- There Will Never Be Another You(Harry Warren)の13-14小節目
- ミクソリディアン♯4の例
- Desafinado(Antônio Carlos Jobim)の3-4小節目(ホール・トーン・スケールも可能)
- ホール・トーン・スケールの例
- Take The `A' Train(Billy Strayhorn)の3-4小節目
- オルタード・スケールの例
- Gee Baby, Ain't I Good To You(Don Redman)の3小節目前半
メジャー・キーでは、ダブル・ドミナント II7 の関係コードとして VIm7 が先行することが多い。 これは、トニック・メジャー代理とのピボットとなっていることが多い。 ただし、II7 がホール・トーン・スケールに対応するとき、関係コードは原則として先行しない。
メジャー・キーの II7 は、主に次のコードに進行する。
- ドミナント V7([[IIm7-V7|IIm7-V7 や IIm7(♭5)-V7|IIm7(♭5)-V7 を含む)
- ドミナントのトライトーン代理 ♭II7(♭IVm7-♭II7)
- トニック・メジャー(ベース音がドミナントのもの)I/V
- サブドミナント・マイナーとその代理コード IVmmaj7'、IVm6、♭VII7
- トニック・ディミニッシュ ♯IIdim7
また、メジャー・キーの II7 は、トニック・メジャー Imaj7 とその代理コード VIm7、II7 へのドミナント VI7 とその代理コード ♭III7(それぞれ関係コードが先行する場合を含む)などから進行する。 VI7 と ♭III7 は、ほとんどの場合エクステンデッド・ドミナントの一環であろう。
また、II7 に進行するトニック・メジャー代理 VIm7 は、II7 の関係コードに相当するが、このコードが II7 に対して相対的に「弱拍」に置かれるとき、いわゆる「呼び込みの関係コード」として機能する。
マイナー・キーにおけるダブル・ドミナント II7
マイナー・キーにおいて、ダブル・ドミナント II7 に対応するスケールは、オルタード・スケールまたはフリジアン♯3のいずれかであることが多いが、これらは実際にはそこまで厳密に区別されないことも多い。 いずれも、短9度と短13度のテンションを持つという共通点がある。
マイナー・キーでは、ダブル・ドミナント II7 の関係コードとして VIm7(♭5) が先行することが多い。 これは、トニック・マイナー代理とのピボットとなっていることが多い。
マイナー・キーの II7 は、主に次のコードに進行する。
- ドミナント V7([[IIm7-V7|IIm7-V7 や IIm7(♭5)-V7|IIm7(♭5)-V7 を含む)
- ドミナントのトライトーン代理 ♭II7(♭IVm7-♭II7)
- トニック・マイナー(ベース音がドミナントのもの)Im/V
また、マイナー・キーの II7 へは、トニック・マイナー Im とその代理コードVIm7(♭5)、II7 へのドミナント VI7 などから進行する。
II7 の代理コードや関係の深いコード進行
ダブル・ドミナント II7 の代理コードとして、トライトーン代理の ♭VI7 がある。 これは、マイナー・キーで特に好まれる傾向にある。
また、メジャー・キーにおけるダブル・ドミナント II7 は、トニック・ディミニッシュ(特に ♭IIIdim7) と関係がある。
例えば、こんにち ’S Wonderful(George Gershwin)の27-28小節目は ♭IIIdim7 で演奏することが多いが、もともとは II7であった。
ただし、対応するスケールに注目すると、 II7 がミクソリディアンであるのに対して、♭IIIdim7 はディミニッシュ・スケールであるため、スケールは共通していない。 よって、♭IIIdim7 は II7 の代理コードとみなすよりも、リハーモナイズしたものと考えるほうが妥当かもしれない。
IV へのドミナント I7 に先行する関係コード Vm7 に進行する II7
メジャー・キーにおいて、II7 は Vm7 に進行することがある。 この Vm7 は多くの場合、サブドミナント・メジャーへのセカンダリ・ドミナント I7 に対して関係コードとして先行している場合が多い。
このとき、II7 についてはダブル・ドミナントではなく、単なる広義のドミナント(広義のセカンダリ・ドミナント)と考えることもできる (個人的にはダブル・ドミナントと厳密に区別することにさほど大きな意義を見出すことができないが、このように注意深く観察する視点はとても重要だと考える)。
このとき、多くの場合、II7 に対して関係コード VIm7 が先行する。 また、II7 に対応するスケールは、原則としてミクソリディアンであろう。