ハーモニック・マイナー・スケール
マイナー・スケールの一種で、主にドミナントと関連して使われる。
ハーモニック・マイナー・スケールの各モードは次の通り(スケール名の別名も示した)。
番号 | 名称 | 構成 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | エオリアン♯7 | 1 2 ♭3 4 5 ♭6 7 | ハーモニック・マイナー・スケール |
2 | ロクリアン♯6 | 1 ♭2 ♭3 4 ♭5 6 ♭7 | |
3 | アイオニアン | 1 2 3 4 ♯5 6 7 | アイオニアン・オーグメント。平行調のトニックで使用。 |
4 | ドリアン♯4 | 1 2 ♭3 ♯4 5 6 ♭7 | |
5 | フリジアン♯3 | 1 ♭2 3 4 5 ♭6 ♭7 | フリジアン・ドミナント |
6 | リディアン♯2 | 1 ♭2 3 ♯4 5 6 7 | |
7 | スーパー・ロクリアン♭7 | 1 ♭2 ♭3 ♭4 ♭5 ♭6 ♭♭7 | オルタード・ディミニッシュ・スケール |
また各ダイアトニック・コードは以下のとおりである。
ハーモニック・マイナー・スケールでは、ダイアトニック・コードを機械的につくっても、コードとスケールの対応が実用的とはいえないものが多く含まれる。 よって、私はより実用的に考えることができるようダイアトニック・コードをこのように設定している。
まず、最初のダイアトニック・コードがなぜ Immaj7(♯5) なのかと疑問に感じる方もいるだろう。
ハーモニック・マイナー・スケールから機械的にダイアトニック・スケールをつくると、最初のコードは 'Immaj7 となる。 ところが、このコードに対してエオリアン♯7が対応するケースはほとんどない。 一方で、トニック・マイナーのクリシェ中にあらわれる Immaj7(♯5) ではこのスケールを想定することがある。 コード・シンボルでは「♯5」のように増5度で表記されているが、この音は実質的に異名同音的音程である短6度である。
以上が最初のダイアトニック・コードを Immaj7(♯5) と設定するほうが実用的だと考える理由である。
2、4、6番目のダイアトニック・コードについて、それぞれ対応する第2、第4、第6モードにはディミニッシュ・コードのコード・トーンが含まれていることに注目し、このうち第4、第6番目の実用的なダイアトニック・コードとしてディミニッシュ・コードを想定した。
すわなち、IVdim7、♭VIdim7 である。 いずれも、ダイアトニック・コードである VIIdim7 の転回形でもあるのだが、これらはすべて実質的に、V7(♭9) のルートを省略し、それぞれの音をベース音に指定したものである(例えば、IVdim7 は V7(♭9)/IV)。
キーとの関係で重要なのは、主に以下のコードである。 これらのコードの主な和声的機能は次の通り。
- Immaj7(♯5)
- トニック・マイナーのクリシェ中であらわれるコード。
- IIm7(♭5)
- ドミナントの関係コード、サブドミナント・マイナー代理。テーマのときに限り、メロディとの関係でこのスケールが想定されるケースがある。
- ♭IIImaj7(♯5)
- 平行調のトニック・メジャーで使われる(平行調から見るとImaj7(♯5))。♭III6(平行調では I6)に進行しようとするこのコードは、実質的には、V7(♭9)/V(平行調ではIII7(♭9)/I)であり、実質的にドミナントの側面もある。
- IVdim7
- ドミナント代理
- V7
- ドミナント
- ♭VIdim7
- ドミナント代理
- VIIdim7
- ドミナント代理
以上のように、ハーモニック・マイナー・スケールは主にドミナントと深い関係がある。