コード・シンボル
コードをあらわす記号をコード・シンボルという。 コード・シンボルは、コードの種類をあらわし、 また、テンションとベース音をそれぞれ指定することができる。
即興音楽であるジャズにおいて、コード・シンボルは、ソロやコンピングを演奏する上でスケールを特定する手がかりとなる。 よって、こんにちではコード・シンボルはスケール・シンボルとしての役割を持つといえる。
コード・シンボルの構造
コード・シンボルは次の5つの部分で成り立っている。ただし、5つすべてが指定されているケースは極めて稀である。
ルートの音名
一般に英音名であらわす。
コードの種類
ジャズでは一般に以下の5つに分類される。 ルートの音名に続くコードの種類をあらわす記号を括弧内に示す。
- メジャー・コード
- メジャー・セブンス・コード(maj7)
- シックスス・コード(6)
- マイナー・コード
- マイナー・セブンス・コード(m7)
- マイナー・メジャー・セブンス・コード(mmaj7)
- マイナー・シックスス・コード(m6)
- ドミナント・セブンス・コード(7)
- ハーフ・ディミニッシュ・コード(m7(♭5))
- ディミニッシュ・コード(dim7)
コード・トーンを変化させる指示
ジャズでは主に以下の2つが使われる。
- 4度の掛留和音(sus4)コード・トーンの長3度を完全4度に変化させる。
- 増5度((♯5))コード・トーンの完全5度を増5度に変化させる。
テンションの指定
詳細はテンションを参照。
- 9度のテンション
- 短9度(♭9)
- 長9度(9)
- 増9度(♯9)
- 11度のテンション
- 完全11度(11)
- 増11度(♯11)
- 13度のテンション
- 短13度(♭13)
- 長13度(13)
- メジャー・コード
- maj9 は、maj79 をあらわす。
- maj13 は、maj713 をあらわす。このとき、長9度のテンションも暗黙的にあらわしていることも多い。
- マイナー・コード
- m9 は、m79 をあらわす。
- m11 は、m711 をあらわす。このとき、長9度のテンションも暗黙的にあらわしていることも多い。
- m13 は、m713 をあらわす。このとき、長9度と完全11度のテンションも暗黙的にあらわしていることも多い。
- mmaj9 は、mmaj79 をあらわす。
- mmaj11 は、mmaj711 をあらわす。このとき、長9度のテンションも暗黙的にあらわしていることも多い。
- mmaj13 は、mmaj713 をあらわす。このとき、長9度と完全11度のテンションも暗黙的にあらわしていることもある。
- ドミナント・セブンス・コード
- 9 は、79 をあらわす。
- 11 は、7sus4 をあらわしていると考えられる。このとき、短9度のテンションが明示されていないとき、長9度のテンションも暗黙的にあらわしていることも多い。
- 13 は、713 をあらわす。このとき、短9度や増9度のテンションが明示されていないとき、長9度のテンションも暗黙的にあらわしていることも多い。
- 7altは、短9度、増9度、増11度、短13度のテンションを一括して指定されていると考えられる。ただし、増11度を含まないことがある。
- ハーフ・ディミニッシュ・コード
- m9(♭5) は、m7(♭5, 9) をあらわす。
- m11(♭5) は、m7(♭5, 11) をあらわす。このとき、長9度のテンションも暗黙的にあらわしていることも多い。
ベース音の指定
ベース音を指定するときは、「/」記号または、「on」に続けてベース音の音名を記す。 ベース音はコード・トーンの音だけでなく、それ以外の音が指定されることもある。
さまざまな表記法
コード・シンボルが普及してからまだ歴史が浅いため、正書法というものがなく、表記の統一や標準化がじゅうぶん行われていない。 したがって、書き手や出版社、地域によって表記の仕方にさまざまな違いがある。 以下に、当サイトでの表記と、それ以外のさまざまな表記法についてできるだけまとめた。
- maj
- M、MA、ma、MAJ、△
- m
- MI、mi、MIN、min 、-
- m7(♭5)
- ø、ø7
- dim7
- dim、○、○7
- 数字の前の♭
- -
- 7(♯5)
- aug7、+7、7aug、7aug5、7+、7+5
- 7(♯5, 9)
- aug9、+9、9+、9+5
- 数字の前の♯
- +
- (♯5)
- aug、aug5、+、+5
- sus4
- sus、4
また、ビッグ・バンドの譜面では、できるだけ少ない文字数でコードを表記しようとする傾向がみられ、多くの省略記号を用いるだけでなく、C79 を C9 と書くなど、数字を大きな数字にまとめて表記することが少なくない。 このような数字の省略については次ににまとめた(略記法に続き、当サイトでの記法を掲げた)。 音名、maj、mなどの直後に6や7以外の数字が続く場合は、この表にしたがって読み替えるとよいだろう。
- 4
- sus4
- 9
- 79
- 音名あるいはmaj直後11
- 7sus4
- それ以外の11で、かつ7の表記がない場合
- 7(9, 11)
- m13
- 7(9, 11, 13)
- 13(mがなく、かつ♭9や♯9がない場合)
- 7(9, 13)
- 13(♭9や♯9がある場合)
- 713
以上から、いくつかの表記を当サイトの表記法にすると以下のとおりになる。
- CM7 → Cmaj7
- C-9 → Cm79
- Cø9 → Cm7(♭5, 9)
- C-7-5 → Cm7(♭5)
- C+7・C7+ → C7(♯5)
- Caug9・C9aug・C9+5・C95+ → C7(♯5, 9)
- C7-13 → C7(♭13)
- Cm11-5 → Cm7(♭5, 9, 11)
- Cm13 → Cm7(9, 11, 13)
- C13(♭9) → C7(♭9, 13)
また、変化音やテンションの表記には、書き手の癖や理解度が反映されがちである。 なかには明らかに不適切な事例や、理解不足に起因する混同も見られる。 どうしても理解できない表記があったら、典型的な混同の例を以下に示すので、 これを参考にして読み替えを検討していただきたい。
| 変化音 | テンション | テンション(単音程表記) |
|---|---|---|
| ♭5 | ♯11 | ♯4 |
| ♯5 | ♭13 | ♭6 |