♯IVm7(♭5)
一般に ♯IVm7(♭5) で説明されるが、キーによっては ♭Vm7(♭5) で表記されることもあるだろう。
主にメジャー・キーで使われ、VII7 に先行する関係コードのほか、ダブル・ドミナント II7 の代理コードとして機能することがある。
ただし、VII7 がドミナント V7 の代理コードとしてホール・トーン・スケールに対応するとき、原則として関係コードとして ♯IVm7(♭5) が先行することはない。
対応するスケールは、ロクリアンまたはロクリアン♯2である。 ♯IVm7(♭5) に続く VII7 がトニック・ディミニッシュ代理のときは、ロクリアン♯2が好まれる傾向がある。
ドミナント機能を持つ VII7 に先行する関係コード ♯IVm7(♭5)
♯IVm7(♭5) が、ドミナント機能を持つ VII7 に対して関係コードとして先行することがある。 このとき、VII7 は III または ♭VII に進行するセカンダリ・ドミナントまたはエクステンデッド・ドミナントであろう。
このようなとき、♯IVm7(♭5) に対応するスケールは原則としてロクリアンであろう。
詳細は、♯IVm7(♭5)-VII7 を参照のこと。
トニック・ディミニッシュ代理 VII7 に先行する関係コード ♯IVm7(♭5)
♯IVm7(♭5) が、トニック・ディミニッシュ代理の VII7 に対して関係コードとして先行することがある。 このようなとき、♯IVm7(♭5) に対応するスケールはロクリアン♯2が好まれる。 なぜなら、ロクリアンと比べてロクリアン♯2のほうが、トニック・ディミニッシュ代理 VII7 に対応する VII半音-全音ディミニッシュ・スケールと共通音がわずかに多いからであろう。
詳細は、♯IVm7(♭5)-VII7 を参照のこと。
ダブルドミナント II7 代理の ♯IVm7(♭5)
メジャー・キーにおいて、♯IVm7(♭5) が、ダブル・ドミナント II7 の代理コードとなることがある。 このとき、♯IVm7(♭5) は、実質的に II79 のルートを省略したもの(あるいは、ベース音を ♯IV に変更したもの)と考えることもできるだろう。
メジャー・キーのダブル・ドミナント II7 は、ミクソリディアンあるいはミクソリディアン♯4であることもある。 よって、ダブル・ドミナント代理 ♯IVm7(♭5) に対応するスケールは、リディアンまたはリディアン♯2となる。
♯IVm7(♭5)-VII7 のうち、♯IVm7(♭5) をダブル・ドミナント代理と考えることもできる。 例えば、On Green Dolphin Street(Bronisław Kaper)の28小節目-29小節目前半や、There Will Never Be Another You(Harry Warren)の28小節目-29小節目前半のコード進行は、♯IVm7(♭5)-VII7-Imaj7 または ♯IVm7(♭5)-VII7-IIIm7 のように演奏することも、また、II7-♯IIdim7-IIIm7 または II7-♯IIdim7-I/III のように演奏することができる。
II7-♯IIdim7 と ♯IVm7(♭5)-VII7 を比べると、♯IVm7(♭5) はダブル・ドミナント II7 の代理コード、VII7 がトニック・ディミニッシュ ♯IIdim7 の代理コードであることが明確であろう。
ほかに、♯IVm7(♭5) が ダブル・ドミナント II7 と解釈できる例には次のようなものがある。
- Night And Day(Cole Poter)の9-10小節目(これは、II7-IVm7 の変形と考えられる)