IV7
メロディック・マイナー・スケールの4度のダイアトニック・コードである。 また、マイナー・スケールとしてのドリアンの4度のダイアトニック・コードと考えることもできるだろう。
対応するスケールは、ミクソリディアン♯4とミクソリディアンで、それぞれ、メロディック・マイナー・スケールとマイナー・スケールとしてのドリアンの第4モードにあたる。
マイナー・キーにおける和声的機能はトニック・マイナー代理や関係コードである。
また、IV7 はメジャー・キーでもしばしば使われ、同主調のトニック・マイナー代理、ブルージーなサブドミナント・メジャー、III へのドミナント VII7 のトライトーン代理などの和声的機能をもつ。
メジャー・キーにおいても、対応するスケールは、原則としてミクソリディアン♯4またはミクソリディアンであることが多い。
トニック・マイナーの代理や関係コードとしての IV7
主にマイナー・キーにおいて、IV7 は、トニック・マイナー Im の代理コードである。 加えて、メジャー・キーにおける IV7 が同主調のトニック・マイナー Im の代理コードである場合がある。 対応するスケールは、ミクソリディアン♯4またはドリアンであるが、メジャー・キーにおける同主調のトニック・マイナーの代理コードのときはミクソリディアンであることもある。 特に、IV7 が短7度上のメジャー・キーのドミナント V7 とピボットになっている場合はミクソリディアンが好まれる。
さらに、マイナー・キーでは、IV7 がトニック・マイナー Im の関係コードとして後置されることがある。 このとき対応するスケールは、先行するトニック・マイナーが Immaj7 または Im6 のときにはミクソリディアン♯4、また Im7 のときはミクソリディアンである。 Im7 に対応するスケールは、エオリアンとドリアンのいずれかであるが、IV7 が関係コードとして後置されるときはドリアンであることが多い。 したがって、先行する Immaj7 と Im6 に対応するアイオニアン♭3とそれに後置される IV7 に対応するミクソリディアン♯4のペアと、Im7 に対応するドリアンとそれに後置される IV7 に対応するミクソリディアンのペアは、それぞれスケールの音がすべて共通していることになる。
トニック・マイナー代理 IV7 は、しばしば Im をリハーモナイズする際に好まれる。 例えば、マイナー・キーのエンディングで最後のトニック・マイナーを Im を IV7 に置き換えることがある。また、Chelsea Bridge(Billy Strayhorn)の1小節目、3小節目前半の Immaj7(Im6)を IV7 に置き換えて演奏することもある(この場合、2小節目、3小節目前半の ♭VIImaj7 または ♭VIIm6 も ♭III7 に置き換える)。 いずれの場合も IV7 に対応するスケールとしてミクソリディアン♯4が好まれ、VI7(♯11) と表記されることが多い。
ブルージーなサブドミナント・メジャー IV7
メジャー・キーにおけるサブドミナント・メジャーは、IVmaj7 や IV6 である。 ところが、ブルージーな楽曲であったり、ブルース・フィーリングを感じさせるフレーズが使われるときには、これらのメジャー・コードに代わってドミナント・セブンス・コードの IV7 が使われることがある。
- 12小節のブルース形式の2小節目や5-6小節目
- God Bless The Child(B. Holiday, A. Herzog Jr.)の1小節目後半
- Lover Man(J. Davis, R. Ramirez, J. Sherman)の5小節目
ブルージーなサブドミナント・メジャー IV7 の前後のコード進行は、サブドミナント・メジャー IVmaj7 に準ずる。
対応するスケールは、基本的にはミクソリディアンであるが、特にソロにおいては、さまざまなスケールが対応する。
♭VII へのドミナント IV7
IV7 が ♭VII へのドミナントとして機能する場合がある。
このうち、進行先がメジャー・コードやマイナー・コードであるとき、大半の場合、短7度上のメジャー・キーまたはマイナー・キーに転調している。 このとき、IV7 は転調先のキーにおけるドミナント V7 とのピボットになっている。
III へのドミナント VII7 のトライトーン代理 IV7
主にメジャー・キーにおいて、IV7 が、 III へのドミナント VII7 のトライトーン代理である場合がある。 トニック・メジャー代理 IIIm7 やVI7 に先行する関係コード IIIm7 や IIIm7(♭5) へのセカンダリ・ドミナントに進行する場合があるほか、III7(関係コード VIIm7 や VIIm7(♭5) が先行する場合も含む)に進行するものは。エクステンデッド・ドミナントの一環をなしている場合も少なくない。
関係コードとして、Im7 が先行する場合もあるが、先行しないケースも少なくない。
対応するスケールは、ミクソリディアンやミクソリディアン♯4の場合がほとんどである。
- There Is No Greater Love(Isham Jones)の2小節目(以降エクステンデッド・ドミナントをなす)