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すべてのコードに対して、対応するスケールを考えるためにはコードの[[ルート]]とスケールの始まりの[[楽音|音]]が一致しているほうが扱いやすい。 | |||
そのようにするためには、前節で述べた代表的なスケールだけではなく、これらを「[[親スケール]]」とした「[[子スケール]]」を考える必要がある。 | |||
主に特定のキーに対応するスケール、すなわち[[メジャー・スケール]]や[[マイナー・スケール]]を親スケールとして作られる子スケールのことを、[[モード]]という。 | |||
== スケールの命名規則 == | |||
スケールは次のように命名されている。 | |||
なお、スケールの一覧は[[:Category:スケール]]を参照。 | |||
=== 特定のキーに対応するスケールの名称 === | |||
[[メジャー・スケール]]と[[マイナー・スケール]]は、それぞれ[[メジャー・キー]]、[[マイナー・キー]]に対応するためこの名称があると考えられる。 | |||
さらに、[[ナチュラル・メジャー・スケール]]と[[ナチュラル・マイナー・スケール]]は、[[キー]]に対応する[[調号]]に対して、[[臨時記号]]を付けることなく表現できるスケールである。 | |||
[[ハーモニック・マイナー・スケール]]は、マイナー・キーにおける[[ドミナント]] '''[[V7]]''' の[[コード・トーン]]の長3度が、[[ナチュラル・マイナー・スケール]]に含まれていないことを解消するために設定されたスケールであることからこの名称があるものと思われる。 | |||
[[ハーモニック・メジャー・スケール]]も同様にドミナント '''V7''' と関係が深い。 | |||
ジャズでは、メジャー・キーにおける '''V7<sup>(♭9, 13)</sup>''' の際に、そのメジャー・キー(コードのルートではない)に対するハーモニック・メジャー・スケールを想定することができる。 | |||
ハーモニック・メジャー・スケールとハーモニック・マイナー・スケールの第6音と第7音には増2度音程がある。 | |||
この音程によってメロディの動きがぎこちなくなる場合があり、これを解消するためのスケールが[[メロディック・メジャー・スケール]]と[[メロディック・マイナー・スケール]]と説明されることがある。 | |||
伝統的な[[西洋音楽]]では、歴史的にそのとおりなのだろうが、こんにちの[[ジャズ和声]]では必ずしもこの考え方にとらわれると本質を見失ってしまう恐れがあるだろう。 | |||
それぞれの名称にとらわれず、メロディック・メジャー・スケールは、メジャー・キーの[[サブドミナント・マイナー]]と、また、メロディック・マイナー・スケールはマイナー・キーの[[トニック・マイナー]]と関係の深いスケールだと理解しておくとよいだろう。 | |||
=== メジャー・スケールとマイナー・スケールの子スケールの命名規則 === | |||
[[ナチュラル・メジャー・スケール]]の第1[[モード]]から第7モードを、それぞれ[[アイオニアン]]、[[ドリアン]]、[[フリジアン]]、[[リディアン]]、[[ミクソリディアン]]、[[エオリアン]]、[[ロクリアン]]という。 | |||
これらは、主にギリシャの地域名の名前であるけれども音楽的にはほとんど無関係とされ、直接的にはグレゴリアン・モードに由来していると考えられている。 | |||
グレゴリアン・モードとはチャーチ・モード(教会旋法)とも呼ばれるが、[[機能和声]]が成立する以前の[[西洋音楽]]の概念であった。 | |||
[[ジャズ]]では、1960年以降のいわゆる「モード・ジャズ」や、[[コード・シンボル]]を[[スケール・シンボル]]として読むようになって以降、スケール名として使われるようになった。 | |||
したがって、西洋音楽におけるグレゴリアン・モードとは演奏上、あるいは作編曲上、直接的な関係はなく、単に名前だけ借用しただけである。 | |||
[[ナチュラル・マイナー・スケール]]の各モードもこれらのグレゴリアン・モード由来のスケール名で表現できる。 | |||
ところが、[[ハーモニック・メジャー・スケール]]、[[ハーモニック・マイナー・スケール]]、[[メロディック・メジャー・スケール]]、[[メロディック・マイナー・スケール]]に対して、さらに独自のスケール名を命名することは現実的ではないだろう。 | |||
そこで、これらのスケールに対しては、グレゴリアン・モードのなかからよく似たスケールを1つ選び、そのスケールとの差異を♯または♭記号とそれに続く数字で表現することが多い。 | |||
例えば、メロディック・マイナー・スケールの第4モード(メロディック・メジャー・スケールの第7モード)は、[[リディアン]]の7度を半音下げたスケールである。 | |||
したがって、このスケールを[[リディアン♭7]]と呼ぶことが多い。 | |||
ただ、この命名規則には同じスケールに異なる名称をつけてしまうという欠点もある。 | |||
例えば、[[リディアン♭7]]は、ミクソリディアンの4度を半音あげたスケールと考えることもできるので、ミクソリディアン♯4と呼ばれることもある。 | |||
このほかジャズにおいてよく使われるスケールについては、[[オルタード・スケール]]のように固有の名称が定着しているものもあれば、ニックネームがつけられたものも少なくない。 | |||
なかには日本固有の名称がつけられたものもある。 | |||
=== その他の秩序を表したスケールの名称 === | |||
[[クロマティック・スケール]]と[[ホール・トーン・スケール]]の名称は、日本語の「半音階」「全音音階」(全音階というと別の意味になる。訳したときの配慮不足だろう)という名前の通り、それぞれ[[半音]]、[[全音]]を機械的に並べたことに由来している。 | |||
このうち、ホール・トーン・スケールは、[[コード]]に対応するスケールとして想定されることがある。 | |||
[[ディミニッシュ・スケール]]は、[[ディミニッシュ・コード]]と関係が深いためこの名称があると思われる。 | |||
なお、ディミニッシュ・スケールの偶数[[モード]]である[[半音-全音ディミニッシュ・スケール]]は、ディミニッシュ・コードではなく[[ドミナント・セブンス・コード]]に対応するスケールの1つであることに注意が必要である。 | |||
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2024年10月27日 (日) 10:32時点における版
楽音をある秩序のもとに順に並べたもの。
代表的なスケール
ジャズで使われる代表的なスケールは次の通り。
- 特定のキーに対応したスケール
- その他の秩序をあらわしたスケール
スケールとモード
即興音楽であるジャズにおいて、キーに対してどのスケールが使われているかに加えて、ソロやコンピングをする上で曲中におけるひとつひとつのコードに対してどのスケールを対応すべきかを理解することが不可欠である。
すべてのコードに対して、対応するスケールを考えるためにはコードのルートとスケールの始まりの音が一致しているほうが扱いやすい。 そのようにするためには、前節で述べた代表的なスケールだけではなく、これらを「親スケール」とした「子スケール」を考える必要がある。
主に特定のキーに対応するスケール、すなわちメジャー・スケールやマイナー・スケールを親スケールとして作られる子スケールのことを、モードという。
スケールの命名規則
スケールは次のように命名されている。 なお、スケールの一覧はCategory:スケールを参照。
特定のキーに対応するスケールの名称
メジャー・スケールとマイナー・スケールは、それぞれメジャー・キー、マイナー・キーに対応するためこの名称があると考えられる。
さらに、ナチュラル・メジャー・スケールとナチュラル・マイナー・スケールは、キーに対応する調号に対して、臨時記号を付けることなく表現できるスケールである。
ハーモニック・マイナー・スケールは、マイナー・キーにおけるドミナント V7 のコード・トーンの長3度が、ナチュラル・マイナー・スケールに含まれていないことを解消するために設定されたスケールであることからこの名称があるものと思われる。 ハーモニック・メジャー・スケールも同様にドミナント V7 と関係が深い。 ジャズでは、メジャー・キーにおける V7(♭9, 13) の際に、そのメジャー・キー(コードのルートではない)に対するハーモニック・メジャー・スケールを想定することができる。
ハーモニック・メジャー・スケールとハーモニック・マイナー・スケールの第6音と第7音には増2度音程がある。 この音程によってメロディの動きがぎこちなくなる場合があり、これを解消するためのスケールがメロディック・メジャー・スケールとメロディック・マイナー・スケールと説明されることがある。 伝統的な西洋音楽では、歴史的にそのとおりなのだろうが、こんにちのジャズ和声では必ずしもこの考え方にとらわれると本質を見失ってしまう恐れがあるだろう。
それぞれの名称にとらわれず、メロディック・メジャー・スケールは、メジャー・キーのサブドミナント・マイナーと、また、メロディック・マイナー・スケールはマイナー・キーのトニック・マイナーと関係の深いスケールだと理解しておくとよいだろう。
メジャー・スケールとマイナー・スケールの子スケールの命名規則
ナチュラル・メジャー・スケールの第1モードから第7モードを、それぞれアイオニアン、ドリアン、フリジアン、リディアン、ミクソリディアン、エオリアン、ロクリアンという。 これらは、主にギリシャの地域名の名前であるけれども音楽的にはほとんど無関係とされ、直接的にはグレゴリアン・モードに由来していると考えられている。
グレゴリアン・モードとはチャーチ・モード(教会旋法)とも呼ばれるが、機能和声が成立する以前の西洋音楽の概念であった。
ジャズでは、1960年以降のいわゆる「モード・ジャズ」や、コード・シンボルをスケール・シンボルとして読むようになって以降、スケール名として使われるようになった。 したがって、西洋音楽におけるグレゴリアン・モードとは演奏上、あるいは作編曲上、直接的な関係はなく、単に名前だけ借用しただけである。
ナチュラル・マイナー・スケールの各モードもこれらのグレゴリアン・モード由来のスケール名で表現できる。 ところが、ハーモニック・メジャー・スケール、ハーモニック・マイナー・スケール、メロディック・メジャー・スケール、メロディック・マイナー・スケールに対して、さらに独自のスケール名を命名することは現実的ではないだろう。
そこで、これらのスケールに対しては、グレゴリアン・モードのなかからよく似たスケールを1つ選び、そのスケールとの差異を♯または♭記号とそれに続く数字で表現することが多い。
例えば、メロディック・マイナー・スケールの第4モード(メロディック・メジャー・スケールの第7モード)は、リディアンの7度を半音下げたスケールである。 したがって、このスケールをリディアン♭7と呼ぶことが多い。
ただ、この命名規則には同じスケールに異なる名称をつけてしまうという欠点もある。 例えば、リディアン♭7は、ミクソリディアンの4度を半音あげたスケールと考えることもできるので、ミクソリディアン♯4と呼ばれることもある。
このほかジャズにおいてよく使われるスケールについては、オルタード・スケールのように固有の名称が定着しているものもあれば、ニックネームがつけられたものも少なくない。 なかには日本固有の名称がつけられたものもある。
その他の秩序を表したスケールの名称
クロマティック・スケールとホール・トーン・スケールの名称は、日本語の「半音階」「全音音階」(全音階というと別の意味になる。訳したときの配慮不足だろう)という名前の通り、それぞれ半音、全音を機械的に並べたことに由来している。 このうち、ホール・トーン・スケールは、コードに対応するスケールとして想定されることがある。
ディミニッシュ・スケールは、ディミニッシュ・コードと関係が深いためこの名称があると思われる。 なお、ディミニッシュ・スケールの偶数モードである半音-全音ディミニッシュ・スケールは、ディミニッシュ・コードではなくドミナント・セブンス・コードに対応するスケールの1つであることに注意が必要である。