ドミナント機能

狭義のドミナント機能（私は「プライマリ・ドミナント」と呼ぶ）は、V7の持つ和声的機能であるが（ドミナントも参照）、広義のドミナント機能には、このほかにダブル・ドミナント、セカンダリ・ドミナント、エクステンデッド・ドミナントを含む。

いずれも、完全5度下がルートの何らかのコードに進行しようとする共通の和声的機能を持つ（ただし必ずしもそうなっている必要はない）。 また、ドミナント機能を持つドミナント・セブンス・コードは、完全5度上をルートとするマイナー・セブンス・コードまたはハーフ・ディミニッシュ・コードを関係コードとして先行させ、これらと一体となってドミナント機能を持つことが多い。

また、ドミナント機能を持つドミナント・セブンス・コードのトライトーン代理は、半音下がルートの何らかのコードに進行しようとする和声的機能を持つが、これもドミナント機能であると考える。

プライマリ・ドミナント

狭義には、ドミナント V7 が持つ和声的機能であり、たいていはそのトライトーン代理 ♭II7　もこれに含める。 私は、次節以下の広義のドミナント機能と区別するときには「プライマリ・ドミナント」と呼ぶことがある。

プライマリ・ドミナントは、トニック（メジャー・キーであればトニック・メジャー Imaj7、マイナー・キーであればトニック・マイナー Im）に進行しようとする和声的機能を持つ。 ただし、実際にどのコードに進行しているかどうかは問わない。

例えば、トニック・メジャーやトニック・マイナーの代理コード等に進行することもあるが、それら以外の、例えばサブドミナント・メジャーやサブドミナント・マイナー、あるいはまったく異なるコードに進行しても、トニックへの進行を期待（予感）させるのであればそれで構わない。

セカンダリ・ドミナント

プライマリ・ドミナントが、完全5度下のトニックに進行することを期待するのと同様に、完全5度下の何らかのコードに進行しようとするドミナント・セブンス・コードまたはその代理コードが持つ和声的機能をいう。 ただし、原則として V7 およびそのトライトーン代理 ♭II7 以外のドミナント・セブンス・コードに限る。

例えば、メジャー・キーのサブドミナント・メジャー IVmaj7 やマイナー・キーのサブドミナント・マイナー IVm7 に進行しようとするI7 や、そのトライトーン代理 ♭V7 はよく知られたセカンダリ・ドミナントである。

エクステンデッド・ドミナント

ドミナント・セブンス・コードの連鎖をいう。 完全5度下（または半音下）のドミナント・セブンス・コード（関係コードが先行している場合も含む）へ進行するドミナント・セブンス・コードが複数連続している場合、それらのドミナント・セブンス・コードの持つ機能をエクステンデッド・ドミナントという。

例えば、I Got Rhythm（George Gershwin）の17-28小節目の2小節ごとに進行するドミナント・セブンス・コード、すなわち III7-VI7-II7-V7 がよく知られたエクステンデッド・ドミナントの例である。 このうち、II7 はダブル・ドミナント（次項参照）、V7 は、プライマリ・ドミナントである。

ダブル・ドミナント

ドッペルドミナントとしても知られる。 セカンダリ・ドミナントのうち、特にドミナント V7 へ完全5度上から進行するドミナント・セブンス・コード II7 と、そのトライトーン代理 ♭VI7 を指す。

ダブル・ドミナント II7 のトライトーン代理 ♭VI7 は、特にマイナー・キーで好まれる傾向にある。