IIm7(♭5)-V7

提供:コード辞典

IIm7(♭5)-V7 は、いわゆるマイナー・キーの「トゥ・ファイブ」として知られているが、実はメジャー・キーでもしばしば使われる。

メジャー・キーとマイナー・キーのどちらであっても、ドミナント V7 と、それに先行する関係コードIIm7(♭5) であり、全体としてドミナント和声的機能を持つと考えることができる。

この文脈における V7 は、原則として短9度のテンションを伴う。

マイナー・キーの IIm7(♭5)-V7

IIm7(♭5)
ナチュラル・マイナー・スケールの2度のダイアトニック・コードで、ドミナント V7 に先行する関係コード(場合によってはサブドミナント・マイナー代理と考えてもよい)。対応するスケールは、ナチュラル・マイナー・スケールの第2モードであるロクリアン
V7
ハーモニック・マイナー・スケールの5度のダイアトニック・コードで、和声的機能はドミナント。対応するスケールは、原則としてハーモニック・マイナー・スケールの第5モードであるフリジアン♯3であるが、オルタード・スケール半音-全音ディミニッシュ・スケールであることもある。

いずれも、マイナー・スケールのダイアトニック・コードで、マイナー・キーの「トゥ・ファイブ」は原則として上のようになる(ただし例外的に IIm7-V7 の場合もある)。

メジャー・キーの IIm7(♭5)-V7

IIm7(♭5)
メロディック・メジャー・スケールの2度のダイアトニック・コードでドミナント V7 に先行する関係コードサブドミナント・マイナー代理コードを兼ねていると考えてもよい。対応するスケールは、メロディック・メジャー・スケールの第2モードであるロクリアン♯2
V7
この文脈ではハーモニック・メジャー・スケールの5度のダイアトニック・コードであろう。和声的機能はドミナント。対応するスケールは、ハーモニック・マイナー・スケールの第5モードであるミクソリディアン♭2であるケースは少なくともテーマのときのみで、ソロのときにはオルタード・スケール、半音-全音ディミニッシュ・スケール、フリジアン♯3のことが多い。

メジャー・キーの「トゥ・ファイブ」は、IIm7-V7 が圧倒的に多い。 ところが、IIm7(♭5)-V7 であるケースも決して例外的とまではいえない。

  • I Love You(Cole Poter)の1-2小節目

私の考えでは、メジャー・キーにおける IIm7(♭5) も、メジャー・スケールの一種であるメロディック・メジャー・スケールのダイアトニックである。

IIm7(♭5) に対応するスケールがロクリアン♯2となるのは、このスケールが、メロディック・メジャー・スケールの第2モードであるからだ。 IIm7(♭5)マイナー・キー借用和音だという理解では、このコードがロクリアン♯2に対応するということを見落としてしまうだろう。

ただし、メジャー・キーにおける IIm7(♭5)-V7IIm7(♭5) が例外的にロクリアンに対応する場合がある。 それは、それまで同主調の文脈でコードが進行していたものが、トニック・メジャー Imaj7I6)でメジャー・キーであることが明かされる場合である(単に転調すると考えてもよいのだが)。

例えば Alone Together(Arthur Schwaltz)の12小節目、What Is This Thing Called Love?(Cole Poter)の5-6小節目のような場合である。

しかし、このような場合であってもロクリアン♯2で演奏することはできる。