「アボイド」の版間の差分
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* 短9度の[[テンション]]は、[[ドミナント・セブンス・コード]]およびドミナント・セブンス・コードの[[4度の係累和音]]について使われる。[[ルート]]と短9度のテンションとの間に生じる短9度音程は許容される。 | * 短9度の[[テンション]]は、[[ドミナント・セブンス・コード]]およびドミナント・セブンス・コードの[[4度の係累和音]]について使われる。[[ルート]]と短9度のテンションとの間に生じる短9度音程は許容される。 | ||
* [[ベース音]]とメロディあるいは内声との短9度音程は許される。ベース音がルート以外の音である場合も含む。 | * [[ベース音]]とメロディあるいは内声との短9度音程は許される。ベース音がルート以外の音である場合も含む。 | ||
これらの禁則は次のように書き換えることができるだろう。 | これらの禁則は次のように書き換えることができるだろう。 | ||
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このとき短9度音程を避けるためにコード・トーンの5度は省略される。 | このとき短9度音程を避けるためにコード・トーンの5度は省略される。 | ||
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[[ドミナント・セブンス・コード]]に対してその[[関係コード]]である[[マイナー・セブンス・コード]]が先行するとき、そのマイナー・セブンス・コードの長6度([[テンション]]としては長13度)の[[楽音|音]]は[[内声]]での使用を避ける。 | |||
これをアボイドの一種と見なすことがある。 | これをアボイドの一種と見なすことがある。 | ||
理由は、後置されるドミナント・セブンス・コードとサウンドが著しく似てしまうことで、関係コードとしてのマイナー・セブンス・コードが後置されるドミナント・セブンス・コードの[[和声]]的効果を打ち消すからである。 | |||
なお、このような場合であっても、先行するマイナー・セブンス・コードの[[メロディ]]に長6度の音が来ることは構わない。 | |||
また、後置されるドミナント・セブンス・コードが[[トライトーン代理]] | また、後置されるドミナント・セブンス・コードが[[トライトーン代理]]にあたるときや、後置されるドミナント・セブンス・コードが[[ドミナント機能]]を持たずに先行するマイナー・セブンス・コードの[[代理コード]]にあたるとき(マイナー・セブンス・コードのほうがいわゆる「本家」のとき)であっても、マイナー・セブンス・コードの内声の長6度は避けられる。 | ||
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2024年10月21日 (月) 09:02時点における最新版
あるコードに対応するスケール上の音のうち、メロディ、あるいは ボイシングの内声の音として使用を避けるべきとされている音。
どの音をアボイド見なすかということについては 立場によって多少の見解の違いがある。 しかし、アボイドを想定する目的は共通しており、 意図しない短9度音程の混入を防ぐことである。
伝統的な西洋音楽には作編曲上の禁則がいくつもある。 これらのなかには、ジャズの演奏や作編曲では必ずしも守られないものもある。 ところが、短9度音程に関する禁則は、 こんにちのジャズの理論にも活かされているといえるだろう。
短9度音程は極めて不協和な音程であり、意図せずに使用することは避けるべきである。 ところが、演奏や作編曲の過程で思いがけずこの音程が生じてしまうことがある。 そのようなことが生じないようにするためのチェック方法が、 アボイドという概念であろう。
短9度の禁則
こんにちのジャズにおいて短9度についての禁則は以下のとおりである。 なお、短2度に関する禁則についても述べる。
- メロディと内声の間に短9度音程、短2度音程が生じないこと。
- 内声の間で短9度音程が生じないこと。ただし、短2度音程は許される(伴奏パートの上2声の短2度も意図があれば許される)。
- 短9度のテンションは、ドミナント・セブンス・コードおよびドミナント・セブンス・コードの4度の係累和音について使われる。ルートと短9度のテンションとの間に生じる短9度音程は許容される。
- ベース音とメロディあるいは内声との短9度音程は許される。ベース音がルート以外の音である場合も含む。
これらの禁則は次のように書き換えることができるだろう。
- コード・トーンの短9度あるいは短2度上の音は、メロディとして使うべきではない。ただし、次の例外を除く。
- メジャー・セブンス・コード、マイナー・メジャー・セブンス・コードの場合、それぞれシックスス・コード、マイナー・シックスス・コードに変更することでルートの音をメロディーとすることができる。
- 短13度のテンションを持つドミナント・セブンス・コードの場合、コード・トーンの5度を省略することで短13度の音をメロディとして使うことができる。
- 省略することが適当ではないテンションの短9度あるいは短2度上の音は、メロディとして使うべきではない。
- メロディの短9度または短2度下のテンションは、内声において使うべきではない。
- 内声について、あるコード・トーンの短9度上のテンションは、そのコード・トーンより低い音域で使うべきではない。
以上から、まずコードに対応するスケール上の音で、 コード・トーンの半音上の音 が狭義のアボイドであるといえよう。 すなわち、メジャー・コードとドミナント・セブンス・コードの完全4度、 マイナー・コードの短2度と短6度、 ハーフ・ディミニッシュ・コードの短2度である。 なお、ドミナント・セブンス・コードの短6度(テンションとしては短13度)は コード・トーンの半音上であるにも関わらずアボイドとはならないため トップ・ノートに使うことができるが、 このとき短9度音程を避けるためにコード・トーンの5度は省略される。
次に注意すべきは、メジャー・セブンス・コードとマイナー・セブンス・コードの トップ・ノートがルートの場合で、 このときは一般にコード・トーンの長7度を長6度に変更する必要がある。 つまり、メジャー・セブンス・コードはシックスス・コードに マイナー・メジャー・セブンス・コードはマイナー・シックスス・コードに それぞれ変更される。
このほかはテンションとコード・トーンとの組み合わせである(広義のアボイド)。 メジャー・コードとドミナント・セブンス・コードの増11度のテンションと完全5度、 マイナー・コードとハーフ・ディミニッシュ・コードの長9度のテンションと短3度、 マイナー・コードとドミナント・セブンス・コードの長13度のテンションと短7度、 ハーフ・ディミニッシュ・コードの完全11度のテンションと減5度がある。
これらの関係を次の譜例にまとめた。
このほか、ディミニッシュ・コードの各テンションとコード・トーンが 短9度音程を作らないように注意する必要がある。
関係コードであるマイナー・セブンス・コードの長6度
ドミナント・セブンス・コードに対してその関係コードであるマイナー・セブンス・コードが先行するとき、そのマイナー・セブンス・コードの長6度(テンションとしては長13度)の音は内声での使用を避ける。 これをアボイドの一種と見なすことがある。
理由は、後置されるドミナント・セブンス・コードとサウンドが著しく似てしまうことで、関係コードとしてのマイナー・セブンス・コードが後置されるドミナント・セブンス・コードの和声的効果を打ち消すからである。
なお、このような場合であっても、先行するマイナー・セブンス・コードのメロディに長6度の音が来ることは構わない。
また、後置されるドミナント・セブンス・コードがトライトーン代理にあたるときや、後置されるドミナント・セブンス・コードがドミナント機能を持たずに先行するマイナー・セブンス・コードの代理コードにあたるとき(マイナー・セブンス・コードのほうがいわゆる「本家」のとき)であっても、マイナー・セブンス・コードの内声の長6度は避けられる。